何故、治療したのに再発したり、歯を失ってしまうのか?
「歯」を失う原因が、「虫歯」と「歯周病」と「外傷性咬合」であることは既に説明しましたが、「治療」をちゃんとしたにも関わらず、何故また「再発」したり「歯」を失ってしまうのでしょうか。
変ですよね。
理由は、3つあります。
1つ目の理由は、「治療」をしても「虫歯」や「歯周病」を引き起こす「病原菌」を、お口の中から完全に取り除き、その攻撃力を無くしてしまうことができないことにあります。
たとえ「治療」したとしても、「虫歯菌」や「歯周病菌」の攻撃は止みません。
これが、「再発」する「攻撃側」の理由です。
2つ目は、「攻撃を受ける側」の理由です。
「病原菌」から攻撃を受ける「患者様」の「歯」や「歯周組織」自身の「抵抗力」や「回復力」、「治癒力」に由来する理由と、「外傷性咬合」という「咬み合わせ」に由来する理由とがあります。
「宿主(患者様自身)」由来の「再発」の理由です。
「病原菌」の攻撃に対して、本来機能するはずの「抵抗力」が、その時々の「体調」や「生活習慣」や「咬み合わせの変化」などによって「一時的」あるいは「慢性的」に低下し、「攻撃」に対して劣勢な状態が続くと「発症」や「再発」をしてしまいます。
さらには、「糖尿病」や「心疾患」などの「基礎疾患」を持っていたり、他の病気の治療のために服用している「お薬」の影響によって結果的に「抵抗力」が低下するなどして「病原菌」の攻撃に負けてしまうこともあります。
このように、「病原菌」の攻撃に「歯」や「歯茎」の「抵抗力」が負けてしまえば、「虫歯」や「歯周病」の「発症」、「再燃」、「再発」、「ステージの進行」などが起こり、「再治療」を招く結果となります。
重要なポイントですが、よい「治療」とは「患者様」が持つ本来の「抵抗力」や「治癒力」、「回復力」を最大限に引き出すことができる「治療」と言っていいかもしれません。
3つ目は、「治療する側」の理由です。
「治療」の「良しあし」や現在の「治療法」自体の「限界」による理由です。
「再発」や「歯を失う」原因である「病原菌」の大きさは、およそ1000分の1ミリです。「顕微鏡」で見なければ見えないレベルです。
同じく「再発」や「歯を失う」原因となる「外傷性咬合」は、少なくとも10分の1ミリ単位の誤差で起こってきます。これも、精度の高い「咬合紙(100分の1ミリ程度)」などで調べないと見落とすようなレベルの話しです。
「咬み合わせ」が気になるとか我慢できるとかいうレベルではありません。
このようなミクロン・レベルの処置が「歯科治療」には、要求されているという難しさが基本的にあります。
「インプラント」という新たな「選択肢」が加わったにしろ、「歯科治療」の根本的な目的は「患者様の歯」を「保存」して「機能させる」ことにあることに変わりはありません。
現在の「治療」では、「保存的治療」がメインにならざるを得ないのです。
「外科的」に「歯」を抜くという「選択」は「所謂、手遅れ」に近い性質のものであり「最後の手段」と考えなければなりません。
「外科的」に「歯」を抜いてしまえば、二度と「再発」することはありませんが、「歯」の「機能」は永久に失います。
「保存的治療」は、「治療方法の選択」や「治療の精度」、「治療技術の限界」との戦いであり、これらの「要素」で「再発」までの「治療」の言わば「耐用年数」が決まります。
「治療」は何年もてばいいのかという話とも関連しますが、詳しくは別の章で説明します。
「再発」を繰り返したり、「歯を失う」理由が、「患者様」自身ではなく、「治療」や「歯科医」側にあることも事実なのです。
再発や歯を失わないためにはどうすればいいのでしょう。
「再発」を繰り返したり「歯を失ってしまう」のには、3つの理由があると述べましたが、では、どうすればよいのかを説明します。
先ず、「攻撃側」に関して言えば、「虫歯菌」や「歯周病菌」の数を減らし、その影響力を小さくすることが大切です。
「ブラッシング」や「歯医者がやるクリーニング」そして「お薬」など「感染菌」の数を減らす方法はありますが、どれも一時的な効果に留まり、それらの「効果」はせいぜい「数時間」というところでしょう。
「毎食後」の「ブラッシング」が勧められている理由はここにあります。「ブラッシング」直後から一時的に力を弱めた「感染菌」の攻撃力も次第に盛り返してきます。
また、よく「磨いている」のと「磨けている」のは違うんだという話は聞いたことがあると思いますが、正しくその通りです。
より「効果的なブラッシング」を実行することによって、より「効率」よく「効果的」に「感染菌」の影響力を弱めることができます。
適切な「ブラッシングのタイミング」や「ブラッシング方法」を知り、こつこつと実践することによって、より大きな「効果」が期待できます。
次に「歯」や「歯周組織」の「抵抗力」や「治癒力」を「病原菌」の攻撃に負けないようにすることが必要です。
「病原菌」の攻撃力を弱めると共に、如何に「歯」や「歯周組織」の「抵抗力」が勝る状態にしておくかが大切です。
絶えず、「病原菌」の攻撃を受けているわけですから、「免疫力」の低下や「口腔清掃の不足」などによって「再燃」「再発」などの切っ掛けになることは充分考えられます。
最後に、「歯科医」が担当する「治療」によって如何に「再発率」を下げ、「抜歯」に至ってしまう状況を回避するかが大切です。
「自覚症状」だけを頼りに「治療部位」を決めたり「治療方法」を選択するやり方では病気の「進行」や「連鎖」を食い止めることができないばかりか、いらぬ「抜歯」を招いてしまう場合もあります。「自覚症状」が気のせいだと言ったり「治療」が不必要だと言う意味では決してありません。「自覚症状」はむしろ「体からの最後の悲鳴」というように捉えた方が正しい場合が往々にしてあります。
「自覚症状」を伴う「病変」は、その「病変」が「進行」していたり、「活動期」にあることを示しています。
逆に「自覚症状」がなくても既に「再発」していたり微妙なバランスの上に「病変」が一時的に「不活溌な状態」にあるだけかもしれません。
特に「歯周病」のような「慢性の病変」は、「症状」が表にでる「急性期」と「症状」が潜伏する「慢性期」に区別できるほど「症状」に差が出てしまい、「急性期」と「慢性期」を繰り返しながら進行していきます。
「症状」がないからといって「治って」いるとは言えません。
「患者様」のお口の中の「歯」や「歯茎」の状態は、どの「歯」も全て同じ状態ということはなく、例えば「虫歯」が何本かあったとしても全てが同じステージにあることはむしろ稀かもしれません。
きちんとした「検査」と「診断」の基に、「再発率」を下げ「再発」の連鎖を断ち切るような、長期的な展望に立った「治療法」の選択と治療技術の限界に迫るような「精度の高い治療」や「咬合性外傷」の影響を最小限に抑える「精度の高い維持管理」などが大切です。
再発率の低い、再発の連鎖を食い止める治療とは
「治療」を受ける上での「対症療法」の問題点と「根治療法」の必要性は説明しました。
「再発率」を低く抑え、「長期的に安定」する「治療」とはどのようなものでしょうか。
もちろん、「歯医者」が行う「治療」だけで「再発率」が下がるわけではなく、「病原菌」の攻撃を弱めるような「ブラッシング」や攻撃に対して簡単に負けないための「生活習慣」や「食習慣」の健康的な「体調管理」などが重要だということは言うまでもありません。
「治療の精度」とは、1000分の1ミリの「病原菌」の攻撃を防ぐ「精度」であり、「外傷性咬合」を生じさせない10分の1ミリレベルの「咬み合わせ」の「精度」のことを指します。
「治療方法」には、使用する「材料」の違いや「設計」の違いなどが含まれます。
先ず、1000分の1ミリの大きさの「病原菌」の攻撃から「歯」や「歯茎」を守ることは至難の業です。
特に「微小漏洩(びしょうろうえい)」の問題は、「再治療」の「原因」に大きく関わってきます。
「微小漏洩」とは、「雨漏り」のように「病原菌」が「歯」と「詰め物」や「被せ物」の間にできる「すき間」から入り込んでくることです。
どんなに「精度」の高い「詰め物」を作るといっても、「歯」と「詰め物」を「接着」するために「接着剤」が入る「すき間」が必要です。「歯医者」や「技工士」がどんなに頑張っても、この「すき間」を100分の1ミリ以下にすることはできませんし、する必要もありません。
ただし、100分の1ミリの「すき間」があれば、「病原菌」は簡単に入り込んできます。そこで、この「すき間」を塞ぎ、「歯」と「詰め物」を接着するのが「接着剤」です。
「歯」と「詰め物」を「くっつける」意味もありますが、むしろ「雨漏り」を「防止」する役割が大切です。
「セメント」とは全く「次元」のことなる「方法」です。
「すき間」からの「微小漏洩(雨漏り)」を、防ぐには100分の1ミリの「精度」で「型取り」をし、「詰め物」を作り、「接着」することが重要です。
次に「再発率」に関係してくる「治療方法」の中で「材料」に絞って説明します。
「歯科」で使われる「材料」には、「金属」や「プラスチック」そして「セラミック」などがありますが、それぞれに「特徴」があり「利点」もあれば「欠点」もあります。
「治療」に使われる「材料」で一番「優れている」と考えられるのは「生体親和性」に富んだ「材料」です。
例えば、「インプラント」の「人工根」は「チタニウム」や「ジルコニア」などでできていますが、「骨」や「歯茎」に触れても「人の体」は、これらの「材料」を「異物」と認識しません。
このような「材料」を「組織親和性」に優れた「材料」だと考えられています。
「組織親和性」が関係してくる場面は、色々とありますが、最も頻度的に多いのは、「虫歯」の治療でよく行われる「被せ物」を「削った歯」に被せる時です。
「生体親和性」のない「金属」や「プラスチック」の「被せ物」が周囲の「歯茎」に触れれば、「歯肉」は「異物」であると「認識」しますので、「歯肉」の「防御反応」として接触している「金属」などから「剥がれ」てしまい、「治療」をした結果として「歯周ポケット」が「発生」するというおかしな話になってしまいます。
「医原病」と言っていいかもしれません。
本来の「治療」をすることによって「二次的」に「歯周ポケット」を作ってしまうことを避けなければなりません。
そこで、「虫歯」の「進行」によってどうしても「被せる」必要性がある場合で、「自分の歯」の「歯肉」に対応する部分に「エナメル質」が「保存」できるケースであれば、「被せ方」の「設計」を工夫すれば「被せもの」に「生体親和性」までの「材料」を求める必要はないかもしれません。
ただし、「歯肉」に対応する「エナメル質」が既にない場合は、「生体親和性」に優れた「ジルコニア」か「生体為害性」の低い「セラミック材料」が好ましいと考えられます。
次に頻度的に多い「治療」は、「虫歯」の「C3」のステージの治療で「根っこ」の「治療」が終わった後に、「冠を被せる」ための準備として、「根っこ」に「柱」を立て土台を作ります。
「支台築造」と言います。
例えば、「歯」や「根っこ」の「素性(硬さや弾力など)」とは「馴染まない」ほどの「硬さ」や「弾力」のない「金属材料」を使うことによって、「歯」や「根っこ」が「経年的」に「破折」する「リスク」が高くなる場合があります。
「材料」に関しては、沢山あり説明しきれませんが、「治療」で使う「材料」の「選択」が「口腔内疾患」の「発症」の「一因」になったり、「歯」の「寿命」を決める「側面」もあるため、「何処」にどの「材料」を使用するのかは、きちんと「説明」を受けて「患者様」ご自身で最終的に決定すべきだと考えます。
所在地 / 〒816-0802 福岡県春日市春日原北町3-66 アーバンコーナーズ1F
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