歯を失う3つの原因

外傷や悪性腫瘍などいくつかの特別な原因で歯を失うことがありますが、確率的に最も多いと考えられる「歯を失う原因」には、次の3つの原因が上げられます。
「虫歯」「歯周病」「咬合性外傷」です。

虫歯
歯周病
咬合性外傷

ところが、この3つの「原因」が「合併」していることは珍しくありませんので、表面化している「症状」だけを捉えた「対症療法」では、「病因」の本質を見誤ることも多く、結果的に「再発」を繰り返しながら「歯」を失ってしまうことも多くなります。

咬み合わせ
一方で、「虫歯」「歯周病」「咬合性外傷」をなんとか克服できれば、「歯」はそんなに簡単に失うこともありません。
ご自分の周りに、もし健康的な状態で沢山の歯が残っていて、食事や日常生活にほとんど支障がない方がいれば、その方は「虫歯菌」「歯周病菌」攻撃を上手くかわし「咬合性外傷」の影響が少ない咬み合わせ「安定」した「口腔環境」をお持ちの方だろうと考えられます。
逆に、もうすでに何本もの歯を失ってしまっている人は、「虫歯菌」「歯周病菌」攻撃をかわし切れず、おそらく「咬合性外傷」の影響が大きい咬み合わせをお持ちの「不安定」な「口腔環境」であろうと考えられます。

こういう人こそ、これ以上「歯を失わないような口腔環境」を「オーラルリハビリテーション」によって作りださなければなりませんし「治療方針」「治療法」選択する上でも、「安定的な口腔環境」を作り出すことを最も優先的に考える必要があります。

歯ブラシの仕組み

「オーラルリハビリテーション」による「口腔環境」の「回復」や「改善」そして長期的な「維持」が、「歯を残す」ためにも、治療を行っていく上でも最も大切なポイントになります。
「歯を失う3つの原因」をよく知り、きちんと対策をすることが重要です。

次に、それぞれの「原因」について詳しく解説していきます。

「虫歯」

虫歯を誘発する三大要素

「虫歯」は、皆さんのお口の中に普段から住み着いている500種類ともいわれている「口腔常在菌」の中の、たった3種類の「虫歯菌」の攻撃によって「発症」します。
生まれたての赤ん坊のお口の中には「虫歯菌」はいませんが、親などから「虫歯菌」は子へと「感染」します。「虫歯」「虫歯菌」による「感染症」です。しかも、一度「感染」すると歯がなくなるまで「虫歯菌」は攻撃をし続けます。
「虫歯」の治療をしたからと言って、「虫歯菌」がお口の中からいなくなりはしないのです。だから、「虫歯」の治療をしても、時に「再発」したり「虫歯」のステージが「進行」してしまいます。

このような理由から、「虫歯」は「進行性の病気」と言われたり、食生活やブラッシングのやり方などに大きく影響を受けることなどから「生活習慣病」と言われることがあります。さらには、近年「虫歯菌」は「歯」だけでなく「脳出血」や「潰瘍性大腸炎」などへの関与も疑われています。
であるからこそ、「虫歯」の治療には、「口腔環境」の「根本的」な「改善」、「回復」、「維持」のために、「オーラルリハビリテーション」の考え方が「必要」であり「大切」なのです。
ブラッシング

「虫歯菌」による攻撃とは、「虫歯菌」が作り出す「強い酸」によって歯を溶かしながら「進行」し、終には歯の中心部にある「神経」がある部屋まで到達してしまいます。「歯」の中までの「進入路」が確保されれば、お口の中に住んでいるその他の一般的な「常在菌」も加わって(混合感染)、「神経」や「歯」を支えている周囲の「骨」などの組織にまで「感染」が広がっていきます。

「侵襲」や「破壊度」や周囲組織への「拡大の範囲」によっては、虫歯そのものの「治療」やその歯自体の「保存」が非常に困難となります。
「感染」の拡大が止められない場合は、「歯」自体が「重篤な感染症」の「病因(原因歯)」との判断で、「原因除去」のため「抜歯処置」となり「歯」を失ってしまうということになります。

今のところ「虫歯菌」を完全にお口の中から取り除いてしまう方法はありませんので、「虫歯」の治療とは、「虫歯菌」の「攻撃力を弱める」ことと、「攻撃に打ち勝つ守りを固める」と言うことになります。
「虫歯菌」は、1000分の1ミリほどの大きさであるため、「治療した詰め物と歯との間」や「歯と歯の間」などの「ミクロン単位」の小さな「すき間」にいとも簡単に進入して攻撃をしてきます。
このことも、虫歯の「予防」や「治療」を難しくさせています。

「虫歯菌」の攻撃に打ち勝つ守りとして、「キシリトール」「フッ素」の力を借り「歯」の質の強化を図ることも一つの方法と言われています。

加えて、「虫歯菌」の攻撃力を弱めるための「歯」の表面への適切な「ブラッシング」に加えて、「歯」と「歯」の間の「すき間」への「糸ようじ(フロス)」による「清掃(フロッシング)」は効果的です。

「フロッシング」の「習慣」があるか、ないかで、大きく「発症率」が変わります。

次に説明する「すき間」が、実を言うと一番の関門かもしれません。

「治療」によってできる「詰め物」と「歯」との間にできる「すき間」の問題です。
この「すき間」は、「治療」によって、どうしてもできてしまうものです。
従って、この「すき間」への「虫歯菌」の攻撃や侵入を食い止める「治療法」や「治療精度」が大変重要となります。
「虫歯菌」の攻撃に対して、この「すき間」「封鎖」が十分な「抵抗性」を発揮して、長期間に渡って「虫歯菌」の攻撃を防ぎとめるものでなければなりません。
現在の「歯科医療技術」では、100分の1ミリレベルの「精度」での詰め物の「型取り」100分の1ミリレベルの詰め物の「製作」「前提条件」として、同じく100分の1ミリレベルの「レジン性の接着剤」による「結合」が、「すき間」の「閉鎖」に最も効果が高いと考えられています。
この「精度」の高い、「安定的」な「すき間」の「閉鎖」が、「再発」しにくい「治療」の「精度」と言え、「治療」の「質」や「耐用年数」を決定すると言っても過言ではありません。

「歯周病」

歯周病を誘発する三大要素

「歯周病」は、お口の中に普通に住み着いている「常在菌」の中の「歯周病原菌」が、「歯」と「歯茎」との境にある元々「生理的」に存在する「溝(歯肉溝)」の中で「繁殖」して、最終的に「多数派」になることによって「発症」します。
「歯肉溝」が3ミリ以上に深くなったものを特に「歯周ポケット」と呼び、「病的」な状態にあると判断します。
「ブラッシング効果」がでにくくなり、「病状」の進行が止めにくくなるからです。
「歯周病菌」は、「虫歯菌」とは全く異なる「病原菌」で、「内毒素」といわれる化学物質を出しながら、元々は体を守るための「防御反応」であるところの「免疫反応」に作用することによって、「歯」を支える「歯周組織」を「破壊」していきます。
「虫歯」とは、「原因菌」も「成り立ち」も全く異なる「病気」です。
「歯」が「虫歯」になっていなくても、「歯」を支える「支持組織」が「破壊」されることによって、「歯」を失うこともよくあります。

歯周病その1
歯周病その2
歯周病その3
歯周病その4
歯周病その5

「歯」を失う原因の60%が「歯周病」だとも言われています。

従って、「歯周病」を上手く「コントロール」できれば、「歯」を失う「確率」を低く抑えることができると考えられます。
「歯」の周りの「歯肉」や「歯根膜」や「骨」などの「歯周組織」に「感染性」の「炎症」が起こっている状態の総称でもあります。
「歯周病」を「発症」させる特異な「歯周病菌」と共に、「虫歯」と同じように、「病変」の進行に伴い他の一般的な「常在菌」との「混合感染」へと変化していきます。

先ず、「歯肉溝」内で「菌膜(バイオフィルム)」という「常在菌」からなる「極めて薄い」「菌」の膜ができることによって、「歯周病菌」自体の「繁殖力」が増し、その「比率」も徐々に増していきます。
「歯周病菌」の「比率」が高くなっている状態は、「攻撃力」が増しますので「ハイリスク」な状態と言えます。
「細菌」の「比率」の変化を、「細菌叢」の「変化」とも言います。
「効果的」な「ブラッシング法」は、別の章で説明しますが、この「歯周病」の「発症」と「進行」に大きく関わっている「細菌叢」を、攻撃力の弱い「細菌叢」に変えてあげることが、「歯周病」の「治療」「ブラッシング」などの「予防」にとって、とても大きな「鍵」となります。
「腸内細菌」の中の「悪玉菌」を減らし、「善玉菌」を増やすように、「歯周ポケット」内の「歯周病菌以外の比較的無害な細菌」を増やし、「悪玉の歯周病菌」を減らすことが大切となります。

歯周病予防
「虫歯菌」同様、「ブラッシング」しても「歯医者」が丁寧に「クリーニング」しても、「抗菌剤」を飲んでも、「歯周病菌」を無くすことはできませんので、「悪い菌」の影響をできるだけ小さくして、体が持っている「回復力」や「治癒力」が「優勢」になるようにします。

「歯周病治療」の「主体」は、「歯周組織」の「治癒力」や「回復力」を最大限に引き出すことにあります。

「歯周病治療」には、色んな「アプローチ」がありますが、比較的多い「治療」の進め方は、「ブラッシング効果」を「疎外」し、「歯周病」の「原因」にもなっている「すき間」や「段差」などがある「不良」な「詰め物」や「被せ物」を先ず外します。
「詰め物」や「被せ物」が「歯周病」の「病因」になっているからです。

次に、「治療用」の「暫間被覆冠(治療効果を引き出すための、仮の詰め物や被せ物)」に置き換え、「歯肉溝」や「歯周ポケット」付近の「唾液」の循環を「改善」し、「病変部」の「自浄性」を「向上」させます。
「水清ければ、歯周病菌棲まず」です。
ここまでくると、「ブラッシング効果」がでやすい「環境」も作り出されているために、「歯周病菌」の「攻撃力」を容易に「弱め」ることができ「患者様」が持つ「免疫力」、「治癒力」そして「回復力」を「優位」に保つことが「可能」になるため「病変」が「治癒」へと動き出します。

また、「治癒」は、「安静」な状態で進みますので、「歯周組織」の「安静」を「保つ」ために、「歯」と「歯」を「一時的」に「つなぎ、固定」する「暫間固定処置」を行います。
これは、「骨折」の「治療」で「患部」を「安静」にするために行う「ギブス(そえ木)」と似たような「効果」がでる「処置」です。

さらに、「歯周病」を「悪化」させ、「進行」を早め、「治癒」の妨げになる「外傷性咬合」を取り除く「咬合治療」は、とても「効果的」で、「治癒」を進めます。

歯周病

「手術」で「ポケット」をなくしたり、「感染」した「歯茎」を取り除いても、「歯周病」になった「原因」を取り除いてはいませんので、「再発率」も高く、「対症療法的」な意味合いが強くなります。

「歯周病菌」の多くは「空気」が嫌いな「嫌気性菌」で、「虫歯」と異なり「歯」の壁に付着しない「非付着性」の「菌の塊(プラーク)」が主体となり「歯周病」を「発症」させます。
深い「溝」の中は、空気が少なく「歯周病菌」のような「嫌気性菌」にとって「繁殖」に好都合であるばかりか、「ブラッシング効果」も出にくい「環境」です。
そこで、「歯周治療」によって、徐々に「ポケット」を浅くしていくと同時に、「歯周病」を悪化させる「咬合性外傷」を取り除き、「患部」の安静をはかり「歯周病菌」に対して「抵抗性」のある「口腔環境」を作り出すことが大切です。

「外傷性咬合」

「外傷性咬合」とは、「歯」や「歯周組織」に「外傷性変化」を及ぼしてしまう、悪い「咬み合わせ」のことです。
また、そのような「悪い」咬み合わせによって起こる外傷を「咬合性外傷」と言います。
「歯周組織」の内、特に「歯根膜」「歯肉」「骨」に影響を及ぼします。
例えば、高すぎる「詰め物」や「被せ物」によって、元々「健全」であった「歯」の「歯根膜」が「外傷」を受け「破壊」され、「歯」の「動揺(ぐらつき)」や「移動」の原因となることがあります。
このような病態を「一時性咬合性外傷」と呼びます。

外傷性咬合
「歯」と周りの「歯槽骨」は、直接結合しているわけではなく、「歯根膜」という「コラーゲン繊維」や「毛細血管」などによって構成されている「組織」によって「歯」と「歯槽骨」はしっかりと互いに結合しています。

「歯根膜」は、非常に「大切な器官」で、咬んだ時の衝撃を受け止める「ショックアブソーバー」の役目や、咬む力を制御するための、「咀嚼」に関わる「筋肉」の動きをコントロールするための「受容器センサー」でもあります。

そして、「根っこ表面のセメント質(白亜質)への栄養供給」ルートでもあります。
加えて、「歯を歯槽骨につなぎとめ」しっかりとものが「咬める」ように「歯」を固定する役割をもしています。

したがって、この「歯根膜」が「感染」したり「破壊」されたり「伸びきって」しまうと、「歯」で「咬む」という大切な「機能」が大きく「障害」されるだけでなく、「顎関節症」「歯周病」の「発症」や「進行」などに大きく影響を及ぼす結果となります。

そもそも、健全な「歯根膜」の厚みは平均で200ミクロン(100分の2ミリ)と言われており、それ以上の「咬み合わせ」の「誤差」があれば、「外傷性咬合」となる可能性が大きくなります。

そこに、「歯周病菌」が関与すれば「歯周病」の「発症」の引き金となりますので、「歯周病」の「原因」となる「悪い咬み合わせ」と言うことになります。

また、「歯周病」にすでになっている「歯」「外傷性咬合」が加わる「歯周病」の「進行」を急速に早めることになります。このような「咬合性外傷」を「二次性咬合性外傷」と言うこともあります。

外傷性咬合2

「二次性咬合性外傷」は、「歯周病」の「進行」を早め、「治癒」を「困難」にする、非常に「悪い咬み合わせ」です。
「外傷性咬合」を「見つけ出し」「治療」する方法は、少なくとも「歯根膜」の「生理的(健康的)」な厚みの100分の2ミリ以下に「咬み合わせ」の「誤差」を「修正」し保つことです。
この理由から、「咬み合わせ」をチェックするための「咬合紙」の「精度」は、100分の2ミリ以下のものでないと、「正確」な「診断」も「治療」もできないと考えられます。
ちなみに、当院では、100分の1.2ミリの「精度」で「外傷性咬合」の検査を行い、「咬み合わせ」の修正や調整を行っています。
「咬み合わせ」自体は、「上下」の「歯」の「当たり方」で決まりますので、時として「歯」の表面が「摩耗(咬耗)」したり、「歯」を失ったり「咬みぐせ」などにより「変化」する性質のものです。

したがって、一度「咬み合わせ」を「チェック」して「調整」したとしても、時間が経つと「咬み合わせ」が「変化」していることがあるので、「定期的」に「外傷性咬合」がないかを調べておく必要があります。

「咬合性外傷」は、「歯周病」への「影響」以外に、「くさび状の欠損」の「原因」とも考えられています。
「くさび状欠損」は、頻繁に見られる「病態」ですが、冷たいものに沁みる「過敏症」の「原因」の一つに上げられています。
「歯」の「歯茎」に近い部分(歯頸部)に、くさび状に「歯質」の「欠損」が起こり、水などに沁みるというものです。
水などに沁みる

昔は、硬い「歯ブラシ」や「歯磨剤」が原因だと考えられていましたが、今は「外傷性咬合」や「歯ぎしり」など「咬み合わせ」が大きな原因だと考えられています。
つまり、「歯頸部」に「外傷性咬合」由来の「引っ張り応力」が集中することによって、引き起こされる「歯質」の「破壊」がその正体です。

「外傷性咬合」が認められる「歯」によく見られる「病態」です。
したがって、そのような「咬み合わせ」由来の「原因」があるにも関わらず、「沁みる」からといって、そこに「プラスチック」などを「詰めて」「症状」を軽減することは、「対症療法」的な「治療」ということになると考えます。
更に言えば、「生体親和性」のない「表面が不安定」で「汚染」されやすい「素材」と「歯肉」を接触させることは、「歯周病予防」の観点からも「問題」があると考えます。
また、そのような強い「応力」が集中する部位「耐用年数」が比較的「短い」素材を「応用」することに「疑問」を感じます。
時には、「何もしない」という選択が正しい場合もあります。

そもそもの「原因」は、「きつ状欠損」を生み出した「外傷性咬合」にありますので、その「解決」をしない限り「根治的」な「安定」は望めません。

外傷性咬合3
また、「外傷性咬合」は、特に「歯根膜」が「健康的」な場合「患者様」自身が「咬み合わせ」の「違和感」を感じることによって、「外傷性咬合」の存在に気付くことがあります。
これは、「気のせい」でもなく「慣れ」ていいものでも決してありません。
暫くたって、もし「慣れた」と感じるのであれば、それは、まさしく「咬合性外傷」によって「歯根膜」が「損傷」を受け、「歯」の「動揺度(グラつき)」が増したせいかもしれません。

「歯根膜」などの「支持組織」に「炎症」が起こるなどして、「歯根膜」が「厚みを増す(肥厚する)」と、たとえ「外傷性咬合」があったとしても、「自覚的」な「咬み合わせ」に関する「違和感」などはほとんどありません。

このように、「患者様」の「咬み合わせ」に関しての「感覚」が全て正しい情報とは言えませんので、100分の1ミリレベルでの「咬み合わせ」の「検査」と「修正」や「調整」が必要になってきます。
また、「咬み合わせ」は、色んな「要因」で「変化」しますので、「定期的」「検査」「調整」が必要です。
お口の中の「健康」と「咬み合わせ」は、強く関係しています。


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