第一章でも説明したように、お口の中の咀嚼を含めた口腔機能はお口の中にある歯(残存歯)の質や数などによる総力戦になります。
残された総力を損なうことが無いように、虫歯や歯周病の進行を確実に止めるために、質の回復や場合によっては数の回復を図る場合もあります。
進行が止まっていない状態では、時間の経過とともに当然残存歯の質はますます低下し、結果として数を失っていくことにもなります。
そのため、治療によって残存歯の質をこれ以上低下させないように考えられた丁寧な治療と場合によっては、質そのものを向上、回復させるような再建、補強等の治療のアプローチが長期的なお口の中の機能の安定を考えると必須になることもあります。
すでに歯を失ってしまっている場合、当然咀嚼機能は数の点からも低下してしまいます。そこで、患者さんは失った部位の歯を取り戻せば(歯をつくれば)機能が回復するはずだと考えるのは当然です。
インターネットで色々と調べて、手術実績も多く、値段も他より安くて保証期間も短いけど付いていて保証までしてくれるというポイントを元に選んだ施設を受診します。そこで、歯を失ったけども入れ歯は我慢できないのでこことここにインプラントをしてほしいと依頼します。このようにして患者さんの目や感覚を通した希望や方針が、実際の治療方針や診断になってしまうことに気づく患者さんはどれほどいるでしょう。
希望は必ず伝える必要がありますし、最終判断は患者さんがしないといけないのは当たり前です。
しかし、そこで、患者さんが気になっている部位以外の歯が、進行が止まっておらずやがて失われていく可能性があるのかどうかは、担当医の責任の範囲できちんと診断すべきで、患者さんの希望を単に請け負ってはいけません。
そうしないと、お口全体がインプラントに置き換わるだけの、いつが完了日かわからない治療の始まりとなることもあるのです。
お口全体の長期的な機能まで配慮すると、インプラントを植える部位や治療の方針自体も違った設計になるかもしれません。
ドイツや北欧などでは、患者さんは当然希望を伝えますが歯医者の専門的な診断と治療方針の医学的正当性や合理性が受理されれば、保険でのインプラント治療も可能です。ただし、適正な治療効果が得られなかった場合は歯医者が無償で再治療を行わなければならない等の厳格なルールに基づいたものです。当然患者さんも検診等は義務であるなど受けた治療に対する責任は負担しなければなりません。
それほど、インプラント治療を含めたあらゆる治療は、専門家である歯医者の適切で合理的な診断と治療方針に基づいて行われるべきものなのです。
歯が無い部位の機能をどの様に回復するのが最善なのかは、残っている歯がどのレベルまで長期間安定的に回復できるかによって初めて正確に診断できるのです。
今失われている部分の機能回復の前に、残っている部位をこれからも失わせないためにどの様に担保するかが、治療の繰り返しのない長期的に安定した口腔内にするための治療の大前提となります。
















